ラボの生活3  試薬 (1)

こちらの研究所では、必要なバッファー、培地などは「試薬ラボ」というのがあって、そこで全て作ってもらえます。必要ならちゃんと滅菌もしてくれるのです。研究所全体のものを引き受けています。
先日、用事があって、初めてそのラボに行って見ました。常時2〜3人くらいの人がおり、細菌を育てるための培地とか、その他いろいろ作っていました。非常に大きなオートクレーブ(高圧滅菌)機があります。

日本ではテクニシャンや器具洗いの人を雇うのに、どこから費用を出すかということで頭を痛めますが、このように1つの研究所で一括して引受ける施設がある、というのは効率的ですよね。(うちのラボは他所のラボに比べてあまり試薬をオーダしないから不公平だ、なんて言ってはいけません。)ガラス器具などの洗い物も、使い終わったらグリーンウオーター(注)ですすいで決められた缶に入れておくと、集めてちゃんと洗浄してくれます。もちろん、研究所全体でやってくれます。ちなみに秘書さんも1つの階に1人いますし、本当に効率というのをよく考えて運営していると思います。

ただ、研究所というのは教育施設としての役割(つまり将来の研究者を育てる、ということです)もあるので、このようなところで大学院を過ごしてしまうと、試薬も作れない(モル計算、pHの意味から教えてさしあげないといけなかったりして)、器具の洗浄もできない(実験が終わったら後片付けができない、あるいは器具洗い専任の人がいないのに、後片付けは他人の仕事、と勘違いする)、ということになりそうで、一概に良いとは言い切れない部分もあるのですが、さすがに大学時代に相当厳しくトレーニングされてきているようですし、要時調整の試薬とか、めったに使わない試薬は結局は自分達で作らないといけませんから、その辺りは特に大きな問題にはならなさそうです。もっとも、そういうことは大学時代に本来はちゃんと身に付けるべきであって、大学院時代になってから習うことではない、というのがたけこの本音ですが。

このように、極めて効率的に運営されているため、研究者(一応大学だから、教員でもある)たちは本来の業務に打込めるし、研究者の卵たちも、本来の勉強に打込めるのです。だから(気持ちに)余裕ができるのだと思います。

注:デンマークは硬水なので水道水ですすいでそのままにしておくと(カルシウムなどが析出して)真っ白になってしまう。だから、器具を軽くすすいでおくための蒸留水が出る水道があり、その栓が緑色なので、グリーンウオーター、と言う。


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ラボの生活その2 ラボの環境

今、たけこのラボのテクニシャンの一人が病欠中です。電車にかけこみ乗車をしようと走ったら転んでしまい、利き手の指を骨折してしまったそうです。2週間休むとのこと。(デンマーク人もかけこみ乗車するのか、と思いましたが、日本の田舎のようなもので、電車も30分に一本というようなところですから)

日本で「指の骨折で2週間欠勤」は可能でしょうか。
入院して動けないならまだしも、「ふざけんな」といわれそうですね。
指が使えなくても、そこにいることが重要だったりしますし。

2週間も急に休んでその部署がちゃんとまわっていたら、その部署にとってその人は「いらない人」になってしまいます。寂しいことに。
リストラのご時世、最低限の人しか雇えないので、一人が急に休んだらその部署の人から、少なくとも恨まれます。(でも忌引きに対しては何故か寛容。)

だから、風邪引いても、薬でなんとか熱を下げて仕事に行きます。頭痛かろうが、腰痛かろうが、鎮痛剤がんがんに使ってまでも仕事に行きます。松葉づえついても仕事に行きます。

ところが、このような急な休みはいっこうにオッケーなのです。
たけこのラボにはいくつかの分野ごとのテクニシャンがいますが、こういう時に備えてある程度の仕事の融通はお互いに利くようになっています。前もってわかっている休暇ならともかく、突然の長期休暇でさぞかし大変な思いをしていると思えばさほどでもなく。(内心は「け、こんちくしょう」と思っているのかもしれないが、少なくともそういうことを一切顔に出さない)

#余談ですが、子供の病気の時、夫婦それぞれが1日ずつ休みを当然の権利としてとれるそうです。子供の熱でたびたび欠勤するから、という理由で普通にリストラの対象になる日本とは大違いです。

医療費が消費税でまかなわれているということを考えると「余計な治療はしない。自然治癒するのは待つ」ということが普通の感覚になるのかもしれません。「病気なんだからしょうがないぢゃん」というような。

そして、年間5週間の休暇が当たり前です。しかも週37時間労働(つまり週休2日で、1日は半休をとれる計算)。皆、週単位で休暇をとります。そのような労働環境が前提になると、雇用も必然的に余裕をもったものにならざるを得ないのかもしれません。

つまり、限られた人件費の中でよりたくさん人を確保し、個人の労働時間を短く。だから、給料自体は決してよくないが(これは推測でしかありませんが)、生活をしていくには充分なくらい。(「ゆりかごから墓場まで」の北欧ですから)ワークシェアリングの考え方でしょうか。

そして、休暇がたくさんあるだけが理由ではなさそうだけど、ラボのデンマーク人、誰一人して「オレはこんなに忙しいんだぞぅ」というオーラを出していません。

少なくとも日々の生活に余裕がある。サイエンスも楽しんでいる。ボスはしょっちゅう海外出張で飛び回っているほどなのですが、ラボにいるとき(人前で)はいつも笑顔。もちろん他のメンバーもいつも笑顔。だから、とても居心地がよいのです。

デンマークで生活したいと思ったら「笑顔」は重要です。誰かと廊下ですれ違ったら、「Hej」といってにっこり微笑みます。決して、いつもムッとした顔をしていてはいけません。これは重要ですよ!言葉の壁があるならなおさらです。

たけこも日本では「忙しい」オーラをふりまいていたかもしれません。だとしたら周囲の人はさぞかし迷惑だったでしょうね。反省です。でも余裕(=ヒマではない。ココロに余裕があるということです)のある人に向かって「暇そうだねぇ」とイヤミっぽく言うのは勘弁してほしいです。

「具合が悪ければとにかく休め」あるいは「旅行の休暇は大いに結構」という雰囲気です。ありがたいというか、でもなかなかこういうことになじめません。罪悪感を感じてしまいます。やっぱりたけこは日本人です。

以上、ラボの話題からは大分はずれてしまったけど、ラボの労働環境ということで・・・

※後日談 ケガしていたテクニシャンはこの記事を書いた翌日、復帰しました。予定より数日早く復帰できてたけこもうれしいです。

かと思ったら、今度は別のテクニシャンの人がイタリアにスキー旅行・・・いいなぁ。たけこもついて行きたい!でもケガするのがオチだから、やめておきます

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ラボの生活1 恐怖のエレベーター

恐怖のエレベーター、と言っても別にお化けがでるわけではないのですが。
Bartholin buildingにあるこのエレベーター、ちょっと変わっています。
一緒にのってみましょう。
この建物は6階までありますが、なぜかこのエレベーターは5階までしかいきません。

elevator1.jpg

まず、エレベーターが到着すると、とってを引っ張って自分でドアを開けます。
そして乗ります。行き先階を押します。これは普通です。

このエレベーターは2重扉になっていて、自動で中扉が閉まります。

elevator3.jpg

ドアがしまった瞬間に動き出すので、この写真はぶれてしまっています。
(これもまたこわい)
行き先階に到着するとこの中扉は自動で開いてくれます。
ところが、その先が開きません。

elevator2.jpg

冷静に考えれば、自分でこのドアを開けて入ったので、自分で開ければ出られるのですが、慣れないと「閉じ込められたか?」と思ってドキドキしてしまいます。

ちなみにデンマーク人、運動が大好きなのでエレベーターを使う人はあまりいません。
横にある階段を普通に4階、5階とのぼって行く人が多いです。

たけこは4階から6階にある図書館に行くのに階段を上るだけでぜーぜーしてしまうので、当然エレベーター使います。だって運動嫌いだもん。

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