自由には責任が伴う

ここのところ、デンマークでは珍しく、世界をにぎわす騒ぎが起きています。すでに日本でも報道されていることとは思いますが、騒ぎの概要を書いてみます。

ことの発端は去年の9月、デンマークの新聞Jullands-Postenがイスラム教では神とされるMuhammedの漫画(Muhammed師の頭に爆弾がのっている)を掲載したことです。それが、何故4か月もたった今頃になって大騒ぎになったのかは不明なのですが、先週あたりから、イスラム教国ではデンマークに対するデモが急に激しくなり、デンマークの国旗を燃やしたり、デンマークにある大使館を閉鎖したり、とにかく大騒ぎです。さらに、ノルウェーやフランスの新聞もこの漫画を転載したことから、騒ぎは余計に大きくなっているようです。BBCのテレビが報じたところでは、パリやアムステルダムでも大きなデモが起きており、またインドネシアでは特に騒ぎがひどいようです。

また、イスラム教各国ではデンマーク製品の不買運動がおこっています。
デンマークでは乳製品などを中東諸国に輸出していますから、これは経済的なダメージがくると思います。

さて、この騒ぎを受けてJullands-Postenは「謝罪」をしました。
しかし、イスラム教徒たちの怒りはおさまりません。彼等は「政府」に対して謝罪を求めています。
しかし、首相のRasmussenは「我々には表現の自由というものがある。政府がそれについて干渉することはできない」と「表現の自由」を楯(?)に拒否しています。
Rasmussen首相は新年の挨拶の一部で「デンマークには「表現の自由」というすばらしいものがある。これは大切にするべきものだ」ということを強調していました。

確かに「表現の自由」というのは大切にしなくてはいけないことだと思います。
しかしよく忘れがちなのは「自由には責任が伴う」ということです。
「自由」だからといって、なんでもかんでもOKというわけにはいかないでしょう。
私は実際にこの漫画を見たわけではないのですが、ラボのデンマーク人は「あれはひどい」と言っていました。(どこかの新聞では「あれはペニスが立ったイエスを描いたのと同じことだ」とのコメントがついていた)また、実際にイスラム教国から来ている若者とも話をしましたが、彼等にとってMuhammed師は特別な存在で、肖像画を描くことさえ許されていない。あれは冒瀆だ、と言っていました。
つまり、Jullands-Postenの漫画は明らかにイスラム教信者を冒瀆しているのです。

Jullands-Postenは後先を考えずに漫画を掲載してしまった、と思います。

デンマーク政府が謝罪することは、「表現の自由」を否定することでもない。
ただ、文化の違う人たちを傷つけてしまたことに対して謝罪すればいいことだと思います。
ここで意地をはってしまうと、民主主義国家でありがちな「責任のない自由」「権利ばかり主張する」悪い見本になってしまうと思うのですが。

デンマークは移民が非常に多く、特にイスラム教国からの移民はあちこちで見かけます。
増え過ぎてしまったとされている移民を減らすために、今や「市民権を与えるために、デンマーク語のマスターは当然、さらにデンマークの歴史や文化についての試験も課する」という方向になっているそうです。タイ、中国などのアジア系はまだまださほど問題ではないそうですが、宗教的な制約の強い国出身の人たちは、女性が外出することもできず、周囲とのコミュニケーションがとれないことが問題になっています。
それでも、デンマーク政府はこうした移民たちを受け入れてきました。デンマーク人は語学に堪能なので、とりあえず英語が話せればなんとかなっていたのでしょう。文化の違う人たちも受け入れることができる、この寛容さというのは、日本人よりもはるかに優れているように思います。

しかしながら、今回のこの一件で、私はがっかりしてしまいました。
明らかに「自由」の意味をはきちがえているように思えました。

さて、以上の内容、デンマーク語学校でもとりあげられ、デンマーク語でディスカッションしたりしましたが、新聞の用語に全く慣れていない私は全く理解することができず、泣きました(嘘)。


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