医療費無料の裏2

デンマークの医者が、検査しない、処置しない、薬を処方しない、となるとどうやって収入を得るのか?と疑問になります。よけいなことですが。「検査や処置をどんどんすれば収入があがるはずなのに、どうして医者はしないのか?」とラボの人に尋ねたら「そして医者はお金のことを考えてはいけない」と言われました。たけこの頭では「医者が金儲けなんて」なんて思っている一方で、「医者も生活に必死なんだ」という状況をよく知っているので、そんな理想ばかり追求してもいられないのが現実だと認識していたのです。

デンマークでは、医師は自治体(コムーネ)から給料が支払われるのだそうです。ホームドクターは登録されている患者の数に応じて額が決まる(ただし、一人の医師に対して登録できる患者の人数は制限がある)。そして、基本的に医療費は無料で、経費はすべて普段支払っている25%の税金からまかなわれます。つまりより多く検査したり、注射したり、というのは自治体からすると余計な出費になるらしい。

だから、政府は「医師は、極力何もしないように」と言うのです。逆に、目の前に患者が苦しんでいるのをみても、特に命に別状がなければ「申し訳ないけど、何もできない」と言うしかない、医者にも治療の自由がない、といいかえることもできます(本当に医者自身がそう感じているかはわからないけど)。

しかし一方で、この給料のシステムのおかげで医者は(臨床医として働いている分には)自分の生活の心配をしなくていい。「どうしたら保険点数をかせげるか?」と頭を悩ませなくてもよいのです。だから3週間もクリニックを閉めることができるし、何の処置もしなくても平然としていられるのです。そして患者に対して「お客さま」という認識をしなくてよい。(しかし無礼ではない)

医者になるにも学費は無料だから、「あんなに高いお金をかけて医者になったのだから、もとは取らなくては」という発想もうまれない。
一方国民も、25%の消費税を払っていても「その分をとりかえそう」という発想があまりないように見えます。

よく、北欧の福祉国家のよさがいろいろなところで話題になり、某県の某知事などは「日本のスェーデンをめざす」と意気込んでいたこともあるようですが、このようなデンマーク型(北欧型)の、医療に対する考え方は日本に適応できるだろうか?という疑問がわいてきます。
日本では「医療はビジネス」という感覚があると思います。患者に対して「患者様」と呼ぶ病院もあるくらいですから。患者が来なくては収入がない、というシステムになっているのですから、仕方のないことなのですが。

デンマークに来る前、主治医の一人に「ヨーロッパでは日本より治療技術はずっと進んでいますから、日本にいる時よりもよい治療を受けられますよ」と言われ、期待していました。
「よい治療」の定義にもよりますが、たけこ的にはかなり失望しています。デンマークでは、自分が納得のいく治療を希望しても、ドクターが「不要」と判断すればそれ以上の治療はうけられないからです。治療技術が進んでいる、というのは事実かもしれませんが、その恩恵を受けられるかは、別の話ということになります。

つくづく、日本の医療は「患者天国」だな、と感じたのでした。
日本では患者は自分が納得いくまで病院や医師をさがすことができるシステムになっているからです。

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医療費無料の裏 その1

デンマークの医者は「検査したがらない」「処置したがらない」「薬を処方したがらない」つまり、何もしたがらない、というのが基本ということを、覚えておくとよいです。加えていうならば、これは国の方針でもあります。
これは無責任行為ではなく、「医者は責任のとれる範囲のことをする、つまり極力安全な範囲で治療する」ということを意味しているのだ、と理解するとよいのではないかと思います。そしてその「安全な範囲」という認識の範囲が日本人よりも狭い。

たけこがこれだけ医者のところに行って、血液検査されたのは、低容量ピルを処方するときだけ。めったにやらないのか、採血は非常に下手だった。検査は触診、聴診など非観血的検査が中心。日本は労働者に義務づけられている年に1度の「健康診断」もデンマークではありません。(ガン検診はあるけど希望者のみ)

痛み止めもイブプロフェンが最強で、それ以上のものはドクターが処方しない。これが効かない時は、心因性ということで、心理療法をうけることをすすめられます。それでも薬を併用する、ということは最初から考えない。痛みどめの注射なんてもってのほか。急性の痛みの時のみです。

そして、キーポイントはホームドクターです。
このホームドクターという制度は理想だと思いますが、デンマークのシステムをみた限りは、今の日本の医療制度に慣れている日本人には、受け入れがたいかもしれないと感じています。

ホームドクターについて少しまとめてみます。

ホームドクターは、専門医との橋渡し役にもなっていて、患者をトータルに何でも見なくてはいけません。ですからこの人選というのは、住民にとってはきわめて重要なものになるはずです。しかしながら、ホームドクターに関する情報というのは一切公開されていません。ランダムに決めます。あるいは口コミ。実際には彼等はさほど深刻に考えずにドクターを決めます。

しかも、ドクター一人当たりの登録患者数は制限されています。なるべく均等に患者が配分されるようにできている。当然、人気病院(医師)ランキングのようなものは存在しない。ですから、あわないドクターにあたってしまうと悲劇なのですが、基本的にはホームドクターはよく訓練されていて、かなり厳しい試験もパスしているようなので、ほとんど問題はおきないのだそうです。
ホームドクターを変えたい時は、コムーネに連絡すれば変えられますが、100DKKかかります。容易にドクターを変えられると、手続きの問題で困る、とのことですが、現実問題としてしょっちゅうドクターを変える人はほとんどいないとのこと。

そしてもっとびっくりするのは、ホームドクターが自分のクリニックを、夏休み3週間、完全に閉めることができる。

ドクターも患者と考え方があわなかったり、コミュニケーションがうまくいかないと感じると「ドクターを変えなさい」ということを発言するし、患者に対して逆切れすることもできる。

北欧型の医療・福祉は何かと話題になり、理想のシステムにも見えますが、日本にこのようなシステムを導入するのは難しいと感じています。
それには25%という消費税だけではない、もっといろいろな部分の根本を変えなければなりたたないのではないかと思います。
それがなぜかは次回に。

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